キイロイトリらぼ

ぬいぐるみと一緒に生きていきます

【感想】博論日記

博論日記を読んだ.
こういう本があることを知るのは普通は難しい.書店で平積みされるような分野とは言えないし,メディアで紹介されることも多分ないだろう.
自分の場合はGoogleフィードのサジェストにこの本の紹介ページが出てきたので知った.
サジェストされるということは,そういう関連情報で検索したことがある,ということなのだろう.思い当たりはあるが,レコメンデーション技術の発展というものはなかなかに不気味でもある.

博士課程を題材にしたフィクション,エッセイというのは自分にとって初めてである.
たいてい,~教授とか,~博士とか,天才研究者とか,そういった知的な人のポジションがある程度の作品に欠かさずいるくらいで,実際に教授や博士になる人のストーリーというのはかなり珍しいのだろう.教授になりたいという人はまあ少ないとは思うが,医者や警察みたいな同様のストーリーは結構あるように見えるが,何が違うのだろうか.

とまあ,博士課程のあるあるが描かれたこの作品.漫画でもあるので,非常に読みやすい.
舞台がフランスなので日本との背景の違いがあるが,博士課程のあるあるというのは世界共通のようである.

印象的だったのは,はじめと終わり.
はじめ,主人公は博論のテーマをとても楽しそうに考えながら,博士課程への進学を進めている.この心境に共感できる人がどれくらいいるのだろうか.
少なくとも博士課程に進学までする人は,大体そうなのであろう.このはじめのピュアとも言える学術への情熱を博士課程なんて知らない人が見るとどう思うのだろうか.大体の人は,勉強頑張っているね,とかそういう反応なのだろうか.いいや,そうではないのだ,と自分は思う.
きっと誰にでもあったはずの、「面白いから調べている」.
そんなライフスタイルそのものなのではないかと思う.

社会人になってから,元来あったはずの,そういうスタイルがすり減ってきているのがわかる.
目の前の課題に明け暮れて,なんとか自分を保つことに精一杯な日々.
あのとき追いかけていた,面白さへの探求を思い起こしてくれる,大事な本となった.